FAQ(よくある質問)
よくある質問
Q.婚姻費用で私立大学の学費分の加算は?
私立大学の学費を婚姻費用に加算して認定したケースがあります。
東京家庭裁判所平成27年6月26日審判です。
不足分を収入で按分しての加算となっています。
養育費や婚姻費用での私立学費の加算ポイントについては動画でも解説しています。
事案の概要
申立人と相手方は、平成4年に婚姻。
平成6年に長女を、平成9年二女をもうけました。
相手方は、平成22年3月、それまで勤めていた申立人の叔父の会社を退職して別の会社に移りましたが、同年6月に退職。
その後約7か月間無職となり、失業保険を受給。
申立人と相手方は、平成22年7月ころ、相手方が仕事を探すため東京の相手方の実家に戻り、それ以来別居。
相手方の母は、平成22年12月24日、長女の留学費用として350万円を借り入れ、相手方はその連帯保証人となっていました。
相手方は、平成23年1月ころ、相手方叔父の経営する印刷会社に転職。
調停前の婚姻費用と協議
このころ、相手方は、申立人に対し、月額10万円程度を送金していたものの、平成24年10月ころから生活費の送金がされないときがあるようになり、申立人が相手方に連絡をしても、応答がないことも。
相手方は、平成25年には、申立人に対し、合計83万円の婚姻費用を支払いました。
相手方は、平成23年10月、申立人に対し、相手方の相手方母に対する負債等の合計が494万3330円であることを通知し、今後の返済等についての話合いの機会を求める旨の内容証明郵便を送付。
内容証明郵便は、証拠に残る形での郵便方法。強い意思を示すときにも使われます。
相手方は、平成24年12月、長女の大学の学費のため、80万円を借り入れ。そのローンの返済額は、月額2万3335円。
相手方は、平成25年7月、二女の留学費用として114万円を借り入れ。そのローンの返済額は月額1万7422円。
婚姻費用算定のための収入
申立人の収入は、
平成24年分が239万3260円、
平成25年分が295万4994円、
平成26年分が404万0225円。
申立人は、互助組合より、長女の奨学金として238万円(7万円×34回)を、二女の奨学金として235万円(5万円×47回)を借り入れているほか、オートローンとして130万円を借り、月々9500円を返済している状態。
相手方の給与収入は、以前の職場で勤務していた
平成20年分が529万6550円、
平成21年分が511万3200円、相手方叔父の会社に移ってからは
平成24年分が317万円、
平成25年分が307万5000円、
平成26年分が300万円。
婚姻費用算定のための学費の金額
長女は、現在、私立大学三年生。
その学費は年間88万1000円。そのほか、定期代7万5000円等の費用が掛かるが、食費、光熱費及び通信費については長女の奨学金を、その他交際費、娯楽費及び定期代については長女のアルバイト代を充てている状態。
長女は、独立行政法人日本学生支援機構から、月額5万4000円の奨学金の貸与を受けていました。
二女は、現在、私立大学の一年生であり、その学費は、
一年次が入学金26万込みで年間145万6000円、
二年次、三年次は118万6000円であり、定期代が4万6000円。
平成二六年度の私立高校の授業料は月額2万1100円でした。
調停後の婚姻費用支払い状況
申立人は、平成26年6月26日、婚姻費用分担を求める調停を申立て。不成立となり、審判に移行。
相手方は、平成26年6月以降、申立人に対し、婚姻費用を支払っていない状態。
ただし、平成26年11月、長女の学費44万7000円を支払っています。
相手方は、相手方母に対し、毎月4万円を返済し、相手方母名義の債務につき、3万5000円を返済。そのほか、相手方は、生活費として5万円を相手方母に渡しているという生活状態。
婚姻費用の支払い義務
婚姻費用については、別居解消又は離婚に至るまで、双方の経済状況に応じて分担する義務があります。
そして、婚姻費用分担額は、当事者が稼働し、現に給与所得等を得ている場合には、特段の事情がない限り、総収入に対応して税法等で理論的に導かれた公租公課の標準的な割合並びに統計資料に基づいて推計された職業費及び特別経費の標準的な割合から基礎収入を推定してその合計額を世帯収入とみなし、これを生活費の指数で按分して作成した、東京・大阪養育費等研究会による標準算定方式によって計算するのが相当であるとしています。
なお、長女は、二〇歳を超えているものの、大学生であり、算定表の利用に当たっては一五歳以上の未成熟子として考慮するのが相当と指摘。
よって、権利者の収入を404万円、義務者の収入を300万円として、算定表に基づき、婚姻費用を算定すると、相手方が負担すべき婚姻費用分担額は月額2万円から4万円となると認定。
なお、算定表については改定されています。
潜在的稼働力は否定
これまでの相手方の収入額や転職の経緯等からすれば、相手方について、上記認定以上の稼働能力を有するとみて、婚姻費用分担額を算定するのは相当ではないとしています。
潜在的稼働力による収入認定はしないという判断です。
婚姻費用額に私立大学の学費加算
もっとも、算定表では公立中学校・公立高等学校に関する学校教育費は考慮されているが、それ以外は考慮されていないと指摘。
そして、本件では、二女が平成27年4月に私立大学に進学しているから、算定表で考慮されている学校教育費等を超える部分については、それぞれの収入で按分すべきであるとしました。
なお、長女も私立大学の三年生であるが、アルバイトによる収入があること、長女自身が奨学金の貸与を受けていること、長女の年齢及び相手方の経済状況を考慮すると、本件では長女の私学費について加算するのは相当ではないとしました。
そこで、一年次の学費等(入学金を除く。)119万6000円から算定表で考慮された一五歳以上の学校教育費相当額一人当たり年間額33万3844円を控除した86万2156円を申立人及び相手方の収入で按分すると、相手方が算定表で算出された婚姻費用に加えて負担すべき学費は月額3万0615円となります。
そして、本件審判において形成すべき婚姻費用分担の始期については、申立人が本件調停を申し立てた平成26年6月とするのが相当であるところ、二女が私立高校に通学していたこと、大学受験の受験料及び入学金等を申立人が負担していることなどを考慮し、同月から月額3万円を加算するのが相当としました。
これらに加え、相手方が相手方の実家で生活していること、双方に借入金があること、その他本件に顕れた一切の事情を考慮すると、相手方が負担すべき婚姻費用分担額は月額7万円とするのが相当と判断しました。
借金返済は減額理由にならない
これに対し、相手方は、相手方母に対する借金の返済等がある旨主張していましたが、これらが婚姻費用分担義務に優先するとはいえず、上記婚姻費用分担額を左右するものとはならないとしています。
また、相手方には、長女及び二女の学費、留学費等のために借り入れた債務が存在していることが認められるものの、本件では、申立人も学費等のための借入金を有していることから、これらの相手方の債務の返済を理由として、上記婚姻費用分担額を減額することは相当ではないと結論づけています。
未払金から、長女の学費を払っている分を控除し、精算を認めています。
婚姻費用では、私立高校の学費加算もよく問題になります。
婚姻費用問題のご相談は、以下のボタンよりお申し込みください。