離婚と養育費
私立大学医学部と養育費
医学部進学と養育費に関する裁判例
私立大学の学費の特殊ケースとして、医学部進学時の養育費が問題になった裁判例の紹介です。
私立大学医学部に通っている子供が父親に対して、現在の養育費では学費等に不足が生じているということで、扶養料の請求をしたケースです。
大阪高裁平成29年12月15日決定です。
事案
父と母は離婚。
その際、父親が5000万円でマンションを購入、母と子はそこに居住。
離婚調停が成立し、養育費として、子供1人と、子らが大学を卒業するまで、1人月額25万円を支払う、私立大学医学部に進学する場合には、子供らが父親に希望を伝え、不足分については別途協議するとされた。
その後、父親が再婚、養育費の減額調停の申し立てなどをしていたが、不成立となっている。
子は2浪して私立大学医学部に入学したものの、父親と養育費の不足分について協議できずにいた。そのため、扶養料として支払うよう調停を申し立てたが、不成立。審判に移行。
家庭裁判所は、父親が分担すべき追加費用として6年間で407万円 (月額5万7000円)としたが、双方が抗告した。
高等裁判所の養育費計算方法
抗告審は子の私立大学医学部への入学について、父は、養育費だけでは医学部の学費等が足りない事態を想定し、追加の扶養料を負担する意向を有していたと認定。
既存の養育費のうち標準的算定方式では賄えない部分のみ請求できるとした。
子が医学部在学中に要する追加費用については、学納金等約3200万円、そこから公立学校の教育費相当額(年約33万円)の6年分を控除した3000万円程度と認定。
これを父と母でどのように負担するかというと、母は、離婚後、薬剤師として稼働し始めたほか、父がローンを負担するマンションに居住していることから、父と母の分担割合を4対1とし、父の分担額を2400万円と認定。
ここから、過去に払った養育費一時金500万円、二浪目の養育費(年300万円)を控除。
毎月の養育費25万円が標準的算定方式の上限(月額18万円)を上回っていることから、ここに学費も一部考慮されたものとみて、月額10万円、6年間で720万円を控除すべきとした。
その結果、
3200万円
-200万円(公立学校相当額)
-600万円(母親負担分)
-500万円(一時金)
-300万円(浪人分)
-720万円(毎月多めに払っていた部分を含む学費部分)
=880万円と認定。
父の分担額は6年間で880万円程度とし、学費の納入期限にあわせて年3回の分割払いとしています。
原審は、学費負担額から養育費全額を控除したのですが、高裁では、養育費のうち月額10万円のみを学費分として控除したことで、金額が変わっています。
学費が高額なケースでの一つの計算方法として参考にしてみてください。