FAQ(よくある質問)
よくある質問
Q.予備的財産分与の申立とは?
離婚裁判において、被告側が離婚を望まない場合でも、裁判所が離婚を認める可能性があります。
そのような場合に備えて、予備的財産分与の申立を行うことも検討しておくべきです。この記事では、予備的財産分与の申立について詳しく解説します。
この判例をチェックすると良い人は、次のような人。
- ・予備的財産分与の申立について知りたい
- ・離婚裁判を起こされ、争っている
予備的財産分与の申立とは?
予備的財産分与の申立とは、離婚が認められた場合に備えて、被告から財産分与を求める申立のことです。
これは、本来は離婚を望まない被告側が、離婚が認められた場合に財産分与を確保するための手段です。
離婚自体を認めないという主張なんだけど、もし、万が一、離婚請求が認められた場合に備えて、一応、予備として、もし離婚をさせるなら、財産分与もしておいてね、という申立です。
予備的財産分与の申立を行うべき場合
予備的財産分与の申立をしておいたほうが良いのは、離婚を望まないものの、離婚が認められる可能性が相当ある場合です。
離婚請求を受けて、離婚しないと強く争っているものの、裁判所が離婚を認める可能性がある場合に備えて、予備的に財産分与を申立てることが考えられます。
予備的に財産分与の申立をしておかないと、裁判所で離婚判決が出されたものの、財産分与を求めるためには、別途申立を後からしなければならなくなります。
客観的に裁判所が離婚を認める判決を出しそうかどうかを予測する必要があるのです。
予備的財産分与の申立の手続き
予備的財産分与の申立を行う場合には、次のような流れで進めます。
1. 申立書の作成:予備的財産分与の申立書を作成し、裁判所に提出します。この際、具体的な財産の内容や分与の方法について明記するほうが望ましいですが、細かい資料がないことも多く、離婚裁判の初期段階では、相当額の分与を求めるとして、裁判の進行に合わせることを認める裁判所も多いです。
2.証拠の提出:財産分与の対象となる財産についての証拠(預貯金通帳の写し、不動産の登記簿謄本など)を提出します。申立と同時に行うことも多いですが、裁判官によっては、財産分与の基準日を決めたうえで同時提出をさせたり、申立人側からの提出を指示したりします。
3.争点整理:東京家裁や横浜家裁などでは財産分与一覧表を作成し、そこに当事者の主張、金額をまとめて整理する方法が採用されています。この一覧表をみたただけで、双方の主張がわかるようにします。
4.裁判所の判断:裁判所は、離婚が認められた場合に予備的財産分与の申立を審理し、適切な財産分与を決定します。
予備的財産分与の申立のメリットとデメリット
予備的財産分与申立のメリットとしては、次のようなものがあります。
財産分与の確保:離婚が認められた場合でも、財産分与を確保することができます。
紛争の早期解決:離婚後に別途財産分与を求める手間を省き、紛争を早期に解決できます。
予備的財産分与申立のデメリットとしては、次のようなものがあります。
裁判所の誤解:予備的財産分与の申立を行うことで、裁判所に「被告も離婚を受け入れている」と誤解される可能性があります。離婚請求の棄却を求める強い意向がある場合には、その旨の主張をしっかりしておく必要があるでしょう。法的には、このような誤解は起きないはずですが、裁判官も人間ですので、「万一、離婚が認められた場合には」という主張自体で、若干のゆらぎが生じてもおかしくありません。
手続きの複雑化:予備的財産分与の申立を行うことで、財産分与に関する争点が出てきますので、手続きが複雑化し、離婚裁判が終わるまで時間は長期化するのが通常です。
離婚請求自体が棄却された場合には、財産分与の判断はされないので、財産分与に関する主張・立証は何だったんだ・・・ということになります。
予備的財産分与の費用
予備的財産分与の申立費用ですが、この申立は、手続き的には附帯処分扱いとなります。そのため、申立書には1200円の収入印紙を貼ります。
これは、離婚裁判で財産分与の請求を加えるときに加算される印紙代と同じです。
なお、切手代は裁判所によって異なります。
申立書の正本・副本を裁判所に出すのは離婚裁判を起こすときと同じですが、相手への送達をどうするか運用によって違うからです。
離婚裁判で、原告側に代理人弁護士がついていて、弁護士が裁判所まで副本を取りに来るような場合には、郵便切手の納付は不要とされることもあります。
そのため、予備的財産分与申立の際には、納付切手について、事前に家庭裁判所の担当部署に確認をしておく必要があります。
なお、予備的財産分与の弁護士費用については、各弁護士との契約によって違います。
当初の離婚裁判の依頼時に決めることが多いような印象ですが、別途委任契約・費用発生ということもありえます。
予備的財産分与の申立書式
予備的財産分与の申立書式ですが、そこまで多い手続きではないためか、裁判所のサイトなどに書式が見当たりませんでした。文献でも取り上げているものは少ないです。
ただ、基本的には、附帯処分の申立となり、申立の趣旨が、離婚が認められた場合の予備的なものであるということがわかれば良いはずです。これを明記しておくのが良いでしょう。
たとえば、次のような記載です。
附帯処分申立書(予備的申立て)
(財産分与)
第1 申立ての趣旨
原告の離婚請求が認容されることを条件として、
原告は、被告に対し、財産分与として相当額を支払え。
との裁判を求める。
第2 申立の理由
1 原告は、現在、御庁に対し、被告に対し離婚請求訴訟を提起し、目下御庁令和●年(家ホ)第●号事件として係属中である。
仮に原告の請求が認められた場合には、婚姻期間中に形成された夫婦の財産について、財産分与が行われるべきであるので、原告の離婚請求が認容された場合の予備的申立てとして、本申立に及ぶ。
というような記載をします。
最初から具体的な財産分与額がわかっている場合などは詳細な記載をしたほうがスムーズではあります。
『書式人事訴訟の実務』には書式が掲載されていました。
離婚裁判における予備的反訴
離婚裁判において、被告側が離婚に同意しない場合でも、裁判所が離婚を認める可能性があります。
そのような状況に備えて、予備的反訴という手続きを活用することもあります。
予備的反訴とは、離婚裁判の被告が、積極的に離婚を求めるわけではないが、万が一離婚が認められた場合に備えて行う手続きです。
具体的には、離婚が認められた場合を条件として、慰謝料等の請求を行うものです。
予備的反訴の手続き
予備的反訴の手続きは、反訴の一つの形態ですので、反訴手続きと同じです。
反訴状を裁判所に提出して進めます。
その際、予備的反訴であることがわかるように記載します。
予備的反訴と予備的財産分与の違い
予備的財産分与の申立は附帯処分のみを求めるものです。
これに対し、反訴をする場合には、財産分与の請求もそこに含めてすることが多いです。
予備的財産分与の申立は、反訴までは行わない場合の手続きだと考えれば良いでしょう。
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