FAQ(よくある質問)
よくある質問
Q.離婚慰謝料の遅延損害金は何%?
民法改正により遅延損害金の割合は年5%から変更されています。
当面は3%です。ただ、離婚慰謝料を請求する際には、このパーセンテージがどちらになるのか争われることもあります。
この問題については、最高裁判決が出て、離婚成立日が改正民法施行日以降であれば年3%とされました。
最高裁判所第2小法廷判決令和4年1月28日です。
この判例をチェックすると良い人は、次のような人。
- ・離婚慰謝料の請求をしたい
- ・離婚裁判を起こしたい
事案の概要
離婚裁判で、夫婦双方が慰謝料請求。
片方の慰謝料請求が認められたものの、民法改正もあり、慰謝料の遅延損害金の割合が問題になった事案です。
離婚慰謝料と遅延損害金
民法改正により、遅延損害金は時期によって変わるようになりました。
以前は年5%だったものが、改正後、当面は年3%とされています。
ここで、離婚慰謝料の判決が出る際に、いつを基準にして、どちらのパーセンテージが採用されるのか問題になりました。
判決日と改正民法施行日
離婚裁判で、一審の家庭裁判所は、慰謝料請求を認容、遅延損害金について判決確定日の翌日から年5分としました。
控訴され、高等裁判所では、慰謝料請求について120万円の限度で認容。慰謝料請求に係る遅延損害金の法定利率については、高等裁判所の判決言渡しが令和2年9月3日であり、民法の一部を改正する法律の施行日である (令和2年4月1日)の後であることから、どちらのパーセンテージが適用されるか問題となりました。
高等裁判所では、慰謝料請求は、婚姻関係を破綻させたことに責任があることを前提とするものであるところ、婚姻関係が破綻した時期は、改正法の施行日より前だから、改正前民法の年5分としました。
これに対して上告。
最高裁は、年3%を採用
離婚慰謝料請求に係る遅延損害金の起算日が、婚姻関係の破綻時か、又は離婚成立時かが争点となりました。
最高裁は、離婚に伴う慰謝料債務は、離婚の成立時に遅滞に陥るとの判断を示し、離婚慰謝料請求に係る遅延損害金の法定利率について、改正後民法404条2項を適用、判決確定の日の翌日から支払済みまで年3%の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容すべきとしました。
最高裁判決の主文としては、
1 原判決主文第1項(2)のうち、20万円に対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払請求を認容した部分を次のとおり変更する。
上告人は、被上告人に対し、20万円に対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
というものでした。
離婚経緯
平成16年11月に婚姻の届出をした夫婦。
婚姻後同居し、2子をもうけたが、平成29年3月に別居。
双方が離婚請求をするとともに、不法行為に基づき、離婚に伴う慰謝料及びこれに対する判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案でした。
双方が相手の責任による婚姻関係破綻を主張していましたが、高裁では、夫の家族に対する態度や風俗通い等の事情をとりあげ、夫婦婚姻関係の継続を困難とする程度の行為であったと認定しています。
離婚慰謝料は離婚成立で発生
離婚に伴う慰謝料請求は、夫婦の一方が、他方に対し、その有責行為により離婚をやむなくされ精神的苦痛を被ったことを理由として損害の賠償を求めるものであり、このような損害は、離婚が成立して初めて評価されるものであるから、その請求権は、当該夫婦の離婚の成立により発生するものと解すべきであるとしました。
不法行為による損害賠償債務は、損害の発生と同時に、何らの催告を要することなく、遅滞に陥るもの。
したがって、離婚に伴う慰謝料として夫婦の一方が負担すべき損害賠償債務は、離婚の成立時に遅滞に陥ると解するのが相当としました。
これにより、離婚に伴う慰謝料として負担すべき損害賠償債務は、離婚の成立時である本判決確定の時に遅滞に陥ることになり、改正法の施行日前に遅滞の責任を負ったということはできず、遅延損害金の利率は、改正法による改正後の民法404条2項所定の年3パーセントと結論付けました。
なお、慰謝料請求は、婚姻関係の破綻を生ずる原因となった個別の違法行為を理由とするものではないと指摘。
そして、離婚に伴う慰謝料とは別に婚姻関係の破綻自体による慰謝料が問題となる余地はないというべきであり、慰謝料請求は、離婚に伴う慰謝料を請求するものと解すべきであるとしています。
離婚慰謝料請求の遅延損害金
離婚事件では、慰謝料請求がされること、認められることも多いです。
このような請求をする際には、遅延損害金も請求するのが通常です。
ただ、これがいつからスタートするのか起算日が問題になります。
現在は、離婚慰謝料は、離婚して初めて損害が発生すると考えられ、遅延損害金も離婚成立の日から請求できるとする考えが主流です。
離婚慰謝料の種類
離婚慰謝料の中身については2種類に分けられます。
まず、離婚原因について、相手に有責行為、たとえば不貞などがあれば、その行為によって精神的苦痛を受けたことに対する慰謝料があります。
次に、離婚すること自体の精神的苦痛に対する慰謝料もあると言われます。
これらの関係が問題になりますが、離婚慰謝料には、離婚原因の慰謝料も含まれるものの、離婚自体慰謝料が主たるものであり、離婚で初めて損害が発生するという考えが主流です。
そうすると、遅延損害金は、離婚成立時から発生することになります。
遅延損害金率と民法改正
民法改正で、年5%だった遅延損害金率が変更され、当面は年3%とされました。
この改正法については、「施行日前に債務者が遅滞の責任を負った場合における遅延損害金を生ずべき債権に係る法定利率については、新法第419条第1項の規定にかかわらず、なお従前の例による。」とされています。
離婚成立で、初めて遅延損害金が発生するとなると、遅滞の責任を負うのは離婚成立日以降。
改正民法の施行日前に離婚が成立していないと、年5%の請求は難しくなります。
破綻慰謝料
高等裁判所では、請求された慰謝料を「破綻慰謝料」としています。
破綻時に慰謝料が発生するのであれば、離婚成立前でも慰謝料請求権は発生、遅延損害金の請求もできるという結論になりそうです。
しかし、婚姻関係が破綻しても、結婚関係は続きます。配偶者の地位も失いません。
そのため、破綻慰謝料が想定できるとしても、離婚慰謝料に含めて算定すれば良いのではないかと言われます。
最高裁でも、個別の原因の慰謝料ではなく、離婚成立での慰謝料としています。
離婚慰謝料のパーセンテージ
本判決により、離婚慰謝料が請求できる場合でも、遅延損害金は離婚確定以降、そのため年5%の請求は難しいことになります。
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