FAQ(よくある質問)
よくある質問
Q.不貞裁判で探偵費用請求が一部認定された裁判例は?
東京地方裁判所平成29年4月27日判決があります。
探偵費用の一部が損害として認定されています。
とはいえ、不貞行為以前の調査費用も請求に含まれていたため、認定額は20万円のみと低額にされています。
事案の概要
原告が妻。
元夫と不貞関係を持った被告に対し、慰謝料200万円、調査費用304万4609円、弁護士費用50万4461円を請求した事件です。
原告(昭和52年生)と夫(昭和52年生)は、平成10年12月25日に婚姻。
平成28年10月30日に離婚。
娘が2人いました。
被告は、昭和62年生まれの女性。
夫と被告は、平成27年5月16日から17日にかけて、ホテルに宿泊して、性的関係を持ちました。
不貞行為は1回だけ
原告は、被告と夫との本件関係が平成26年1月頃には始まっていたと主張していました。
しかしながら、これを客観的に認めるに足りる証拠はなく、原告の依頼による調査によっても、被告と夫が会っていることは認められるものの、性的関係があったとみられるのは、平成27年5月16日から17日にかけての本件不貞行為のあったときのみであると認められるとしました。
かえって、被告は、夫とは、平成20年頃に知り合ったものの、交際したことはなく、専業主婦になっていた被告に対し、その後、平成27年2月に夫から連絡がきてから、会うようになり、本件不貞行為に至ったと供述。
不貞行為とSNSの証拠
被告のSNSの記録によれば、そのころ被告と夫に交際関係があったとは認めがたい内容(洋服の特徴で本人を確認しようとする内容)がみられ、被告の上記供述は信用できるとしました。
原告の調査によっても、280時間を超える調査において、6回程度被告と夫が会っていることを確認できているとしながら、ホテルに行ったのは1回しか確認できていないとしていることも併せ考えると、被告と夫が、原告の調査依頼の前から交際していたことや、本件不貞行為の前から、被告と夫が不貞行為を反復・継続していたと認めることはできないとしました。
過去のSNSのやりとりも、不貞裁判では証拠となります。ただし、不貞事実の立証以外に、このように、頻繁に会っていたなら送らないはずのメッセージも証拠となりえます。
やりとりがあるなら、過去にさかのぼって使えそうな内容がないかチェックしましょう。
不貞関係者の供述
さらに、被告は、本件不貞行為の後には、同年9月まで夫に会っていない(同月に1回あったのが最後である。)と述べており、被告が、同月30日には原告代理人に対して謝罪文を提出し、夫との関係を認めていることも考えれば、上記事実を認めることができるとしています。
原告は、被告が原告代理人に対して、複数回の不貞行為を認めており、被告の夫がその事実を証言しているなどと主張するが、被告が書いた謝罪文にも、被告が夫に会い続けたことは認めているものの、度々不貞関係を持ったことを認めているとはいえず、また、被告の夫の訴状にそのような記載はあるものの、その事実が立証されているとはいえないから、これらをもってしても、被告と夫の不貞行為は本件不貞行為の1回であると認められ、反復・継続していたとはいえないと結論づけました。
原告としては、このような主張をしたくなるものですが、結局は、不貞された側が主張しているだけであるとの認定となっています。
夫婦関係破綻の主張は否定
被告は、夫から久しぶりに連絡がきた平成27年2月頃には、原告と夫の夫婦関係は破綻していたと主張しました。
しかし、浮気の調査を依頼したからといって、夫婦関係が破綻しているとは限らず、被告も、久しぶりに夫と会って、夫が結婚していることや家族のことを聞いていたというのに、原告と夫の関係がうまくいっていないなどと聞いた形跡はなく、このことからすると、夫も自らの夫婦関係が破綻していたとは考えていなかったと認められ、原告も否定していることを考えると、上記破綻を認めることはできないとしています。
不貞裁判では、夫婦関係が破綻していたと主張されることも多いですが、簡単には通らない主張です。
不貞行為が1回の慰謝料として80万円
原告は、被告と夫の間の不貞行為が行われるまでは、円満な家庭を築いていたのであり、不貞行為により平穏な婚姻生活を侵害され、離婚に至ったと主張、その慰謝料としては200万円を下らないと請求しました。
裁判所は、本件不貞行為により、原告と夫の18年近くにおよぶ婚姻関係は終了したこと、被告と夫の不貞行為は1回だけであり、実質的交際期間も数か月と長くないことが認められ、その他本件に顕れた事情からすると、本件の慰謝料は80万円とするのが相当であると認定しました。
不貞行為が1度とはいえ、離婚になっていることを考慮すると、慰謝料は低めであると感じます。
探偵の調査費用で認められたのは20万円
原告は、本件関係に基づく慰謝料請求を行うため、興信所に調査を依頼し、その結果304万4609円の調査費用を要したとし、これは、被告の不法行為と因果関係のある損害であると主張しました。
これに対し、被告は、本件調査は、被告と夫が再会する前である平成27年1月29日から開始しており、そうであれば、平成26年冬には夫の不貞を疑う行為があったということであり、夫の相手は被告ではなかったのであり、被告が調査の端緒になったわけではなく、調査費用を全額被告に負担させるのは不合理であると反論。
裁判所は20万円のみ損害と認定しました。
確かに、原告の提出する写真や精算書によれば、原告が本件調査を依頼し、被告と夫との関係について写真撮影がされたことは認められるものの、本件調査を依頼した時点では、被告と夫はまだ再会しておらず、被告との関係で平成27年1月からの調査が必要であったとはいえず、どのような調査が行われたのかの内容も不明であり、その支払も原告のみにおいて行ったのかは明らかではないと指摘。
これらの事情からすると、本件不貞行為と相当因果関係のある調査費用を20万円と認めるのが相当であるとしています。
探偵に依頼する経緯なども主張・立証し、被告と関係があったことが認められないと、高額になった場合の請求は難しいということになりそうです。
請求が認められた事例もあります。
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最近は、こんなところもあるのですね。