FAQ(よくある質問)
よくある質問
Q.3年別居すれば離婚できますか?
3年別居していれば離婚できる、と必ずしも言い切れませんが、参考として、裁判例を紹介しておきます。
別居3年での離婚についての裁判例紹介です。
東京高裁平成29年6月28日の判決の紹介になります。
離婚の相談で「別居期間がどれくらいあれば離婚できますか」
というような質問を受けることがあります。
法律でははっきりと何年で離婚できるという規定はありません。
3年が過ぎれば、妻の側から離婚できるという法制度が日本にもあったのですが、奈良時代・平安時代の律令制の時代です。
実際に離婚の可否が争われるケースでも別居期間の長さはポイントにはなってきますが、それだけで決められるものではありません。
事案
今回のケースは3年の別居期間で、妻から夫に対して離婚請求がされたという事案です。
離婚の理由としては不貞や暴力などなく、別居が続いていることから、夫婦関係を継続し難い重大な事由といえるかどうか争われました。
原告から、離婚理由として、妊娠中にも冷淡な対応がされたとか、家事の分担を拒否したなどという事情は主張されていますが、一般的には弱い事情でしょう。
このような内容で離婚請求をしたところ、原審の家庭裁判所では、離婚はNGという判断をしています。
別居直前まで、そもそも離婚を求めていないことや、主張している内容も日常的に生じる不安というものであって、結婚関係は破綻していないと認定。
離婚請求を否定しています。
高裁の判断
これに対して、妻が不服申立てをして控訴。
高裁の判断は、離婚を認めたというものです。
理由として、別居期間中も、関係修復に向けた動きがないということなどから、破綻と認定しています。
結局は裁判所によって、破綻の判断は分かれているのです。
別居3年ということで、微妙な事案の例として紹介しておきます。
別居期間についていうと、実際にこれよりも短い1年とかでも離婚を認めたというケースもあるし、3年以上の期間でも離婚を否定しているケースもあります。
「控訴人は,被控訴人が9歳年上で職場の先輩でもあったことから,被控訴人を頼りがいのある夫と認識して婚姻し,一方,被控訴人も,控訴人を対等なパートナーというよりも,庇護すべき相手と認識しつつも,家事は妻が分担すべきものとの考えで控訴人と婚姻したところ,控訴人は,流産,長女及び長男の出生,2度目の流産を経験するなかで,被控訴人が家事や育児の辛さに対して共感を示さず,これを分担しないことなどに失望を深め,夫から自立したいという思いを強くしていったこと,これに対し,被控訴人は,控訴人の心情に思いが至らず,夫が収入を稼ぐ一方で,妻が家事育児を担うという婚姻当初の役割分担を変更する必要を認めることができずに,控訴人と被控訴人の気持ちは大きくすれ違うようになっていたこと,そうした中,控訴人が看護学校に行っていて不在の際に,被控訴人が未成年者らを厳しく叱るということなどが続き,控訴人はこのまま被控訴人との婚姻関係を継続しても,自らはもとより未成年者らにとっても良くないと離婚を決意するに至り,平成26年1月になって,未成年者らを連れて別居したという経緯が認められ,かかる経緯に加え,別居期間が3年5か月以上に及んでおり,しかも,この間,復縁に向けた具体的な動きが窺えないという事情をも加味すれば,控訴人・被控訴人のいずれかに一方的に非があるというわけではないが,控訴人と被控訴人の婚姻関係は既に復縁が不可能なまでに破綻しているといわざるを得ない。
被控訴人は,事柄の背景を考えれば夫婦喧嘩にすぎないもので,離婚原因は存在しないと主張するが,前記のとおり,夫婦の役割等に関する見解の相違を克服できないまま,控訴人は離婚意思を強固にしており,その意思に翻意の可能性を見いだしがたい上に,既に述べたとおり,別居後は,双方に,今日に至るまで,復縁に向けての具体的な動きを見い出すことができないのであるから,かかる事情に照らせば,既に夫婦喧嘩という範疇に留まるものではなく,離婚原因を形成するものといえ,被控訴人の主張は採用することができない。
被控訴人は,控訴人が最初の流産をした際には控訴人に寄り添おうとしたとか,家事や育児についても,被控訴人としては,仕事との兼ね合いはあるができる限りの協力をしたつもりであるなどと主張するところ,本件においては,被控訴人の主張を裏付けるに足りる証拠はないし,その点を措くとしても,そもそも,被控訴人の主張自体,被控訴人としては自らができると考えた範囲のことを自らの判断で行ったと主張するものにとどまり,被控訴人が控訴人とコミュニケーションをとり,その心情を理解しようと努めたと主張するものではない。被控訴人自身,原審における本人尋問において,夫婦が対等なパートナーという関係ではなかったと述べ,控訴人から育児の窮状を訴えられた際には,控訴人が家事しかやってないじゃないかと述べた旨自認しているほか,控訴人の心情への配慮という点についても,控訴人の実家が自宅のすぐ近くにあることから,被控訴人はこれといったことはしていないと認めている。
以上によれば,控訴人と被控訴人の婚姻関係は既に修復不能なまでに破綻しているものと言わざるを得ない。控訴人の離婚請求は理由がある。」