離婚・不貞のケース紹介
父親親権者事例
父親が親権者となった離婚調停事例
父親が子の親権者として離婚調停が成立した解決事例を紹介します。
親権者になりたいという父親も多いのですが、なかなか厳しいのが実情です。
今回は、父親が親権者になるためのポイントもあわせて解説します。
親権を取りたい父親のポイント
親権争いは難しいものです。
特に日本の家庭裁判所では母親が有利に働く傾向があります。令和3年度司法統計によれば、離婚調停で母親が親権を得るケースは9割以上とされています。
しかし、父親が親権を得ることもあります。
以下に親権を得るために父親が考えるべきポイントを紹介しておきます。
まず、親権者が母では不適切な証拠を集めることです。親権の判断では父母は、男女は平等ではありません。圧倒的に母親が有利です。そのようななかで、父親が親権を得るケースとしては、母が親権者として不適切だと判断されるケースです。
虐待、ネグレクトなどが通りやすい主張です。そのような事実がある場合には、子にとって適切な生活環境を提供できないことを示す証拠を集めましょう。
収入面の資料
子供に安定した生活環境を提供することができることを示すことも非常に重要です。
安定した収入、適切な住居、祖父母などの協力者の有無もポイントです。
収入は養育費でのフォローという考え方もあるため、決定的な要因ではありませんが、少なくとも父親に十分な収入がないのだとすれば、親権の取得は難しくなっていくでしょう。
親権者と子供の意向
可能であれば、子供の意向を尊重し、子供の意向を裁判所に示すことが重要です。
特に、子供が十分に年をとって意見を持っている場合、その意見は重要な要素となり得ます。しかし、これは非常にデリケートな問題であり、子供に対してプレッシャーをかけないように注意が必要です。
家庭裁判所の調査官調査も行われることが多いですので、協力的な態度で対応しましょう。
母との連絡を維持
親権者が決まっていない段階で、父が監護している場合、母と会わせたくないと主張する人も多いです。
しかし、面会交流に協力しない態度だと、親権判断にはマイナスです。
裁判所は、子供と両親の関係を維持することを重視しています。この関係を一方的に断ってしまうと、親権にはマイナスに働きやすいです。
よほどの事情がない限り、面会拒絶という態度は望ましくありません。
親権者の決め方の手順
離婚に関して、親権者はどのように決めるのでしょうか。
親権者は、市役所に離婚届を出す際には、どちらにするか決める必要があります。親権者を決めなければ離婚はできません。
ただし、二人で協議して離婚届を出す協議離婚の場合、どちらを親権者にするかは話し合いで決められます。この段階では裁判所は関与しません。
調停など家庭裁判所が関与したり、弁護士に相談・依頼された場合には、母親が親権を取りやすいですが、協議離婚の場合には、そのような事情がありません。父親が親権を取得できる確率が最も高いのが協議離婚だといえるでしょう。
夫婦だけで話し合いができず、協議離婚がまとまらない場合、弁護士に頼んで交渉したり、家庭裁判所への調停申し立てという流れになります。
調停では、調停委員が中立の立場から双方の意見を聞き、親権に関する解決を促します。
調停で合意が得られない場合、離婚訴訟を提起し、親権争いを裁判所に判断してもらうことになります。
離婚訴訟においては、双方の親権に関する資格や子供の利益を最も考慮できる親を裁判所が判断します。
親権争いのある場合には、裁判所は調査官による調査を命じることがあります。調査官は、子供の現在の状況、双方の親の資格、子供の意向、学校や地域社会からの推薦などを調査します。
調査官は調査結果を裁判官に報告し、裁判官はこの調査報告をもとに親権の判断を行います。
親権とは
ここまで争われる親権とは、法的にどのようなものなのでしょうか。
未成年の子供がいる場合、離婚時には父母のどちらかが親権者(単独親権者)として指定される必要があります。
親権は、未成年の子供を育て、その財産を管理し、法律行為を代理する親の権利を指します。
通常、親権に含まれるものとして、監護権があります。
子供を実際に手元で育てる権利です。法的には、親権者と監護権者を分けることもできますが、最近では、例が少ないです。監護権については、親権紛争の前提として、離婚調停中などに、とりあえず子供を育てる人を決めるため、監護権者の指定として争われることもあります。
監護権のほかに、親権には、子の財産管理権、法律行為を行う代理権も含まれます。
父親が親権者となれた事例
離婚調停において、家庭裁判所の説得もあり、父親が親権者とした離婚が成立した解決事例を紹介します。
離婚調停を申し立て、母のDVを理由として離婚と親権を希望していました。
母の言動には意図の分からない行動や、非協調的な行動が少なくないと感じていたため、関係改善やその継続には疑問がありました。
相談者である父は、自身と子供の安全のため、妻と別居し離婚することを決意しました。
母親からの反論
母は、調停において、専ら家事育児を行っていたと主張。しかし、実際にはほとんど家事育児を行っておらず、行っていた家事育児もずさんなものでした。
また、母は、当方の主張が夫婦喧嘩の一部を恣意的に切り取ったと主張していましたが、そのような主張を前提としても、有形力を行使しているのは母のみでした。有形力の行使は一方的であり、単なる夫婦喧嘩と評価できるものではないと主張しています。
調停では、各暴行・脅迫行為について具体的な態様や、医療機関の受診の有無なども主張しています。
家計支出に関する主張
離婚調停では関連主張として、家計の支出についても主張が対立する事が多いです。
相手の主張を浪費などと主張することです。生活費の負担経緯や、親権での争いがある場合の経済力などの点に関係する問題です。
相手は、こちらの支出が散財と主張してきたため、個別に反論しています。
子に対する暴行の証拠
DVだけでなく、子にも暴行があったため、写真等を証拠提出しています。
母からは、怪我については、別の機会であるとの反論がされていますが、証拠をつけて再反論をしています。
子に対する暴行は、父親が親権者となる確率を高める重要なポイントとなります。
子にとって良くないことは明らかですので、家庭裁判所も重視します。
離婚調停の成立
最終的には、調停員による説得などもあり、離婚調停が成立しての解決となりました。
親権者は父親となり、母からは養育費1人2万円が認められています。
そのほか、お互いに転居・転職時の連絡や進学時の連絡などの条項を作成しています。
離婚調停までの期間
このような細かい主張などのやりとりもあり、別の審判等もあったため、離婚調停による離婚成立まで、受任から3年程度がかかっての解決となっています。
離婚調停関係で、ここまで長期化することは珍しいですが、親権に関する紛争があると、相手によっては年単位で時間がかかることも多いですので、この点を考慮して方針を決めた方が良いでしょう。
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